世間を騒がせるクレディ・スイスの破綻危機とUBSによる救済劇。
金融の専門家ではありませんし、この一連の騒動を新聞で目にしているくらいの浅はかな知識しかないので専門的なことは語れませんが、感じたことを綴ろうと思います。
- AT1債の無価値化
- AT1債が永久劣後債であり、クレディ・スイスの場合、政府の支援が元本削減のトリガー条項になっているとはいえ、金融の基本的原則である「債権者は株主より優先的に保護される」という原則が覆されたことについては驚きました。劣後債であるので、投資家もそれなりのリスクプレミアムを受け取ってはいたと思いますが、無価値化というのはあまりにインパクトが大きいなと思います。
- 政府の介入と救済
- UBSによる買収にあたり、スイス政府が緊急法令を制定し、中央銀行による流動性供給等の支援を行なっていますが、その根拠として憲法の安保条文を適用しているのが印象的でした。「国の利益の保護」と「急迫な重大なかく乱に対処する為」に政府が命令を制定し、決定を下すことが出来るという憲法解釈を金融分野に適用したようですが、たしかにクレディ・スイスの規模の金融機関が破綻をしてしまうと国民に及ぶ負の影響が大きすぎる為、もちろん議論はあるでしょうが、理解が出来る対応ではあると思います。
- 起きてしまった危機
- サブプライムローン問題が引き金となった2007年からの世界金融危機の再発を防ぐために、現在は金融機関に厳格な自己資本規制や流動性規制(所謂バーゼルⅢ)が敷かれていますが、それでもこういった危機が起こるということは、やはりブラック・スワン(黒い白鳥=ありえない事象)は常日頃、私達の背後に潜んでいるのだな、ということを実感しました。
ナシーム・ニコラス・タレブが著書「ブラック・スワン」のなかで、「異常であり・大きな衝撃があり・事象が起こった後に、あたかもそれが予測可能であったことにしてしまう」ような事象をブラック・スワンと定義していますが、今回のクレディ・スイスの事例から、極端な事象は起こるものだと想定して、日々の仕事に向き合うことが大切であると改めて感じました。