点と点をつなぐ

「Connecting The Dots(点と点をつなぐ)」は、スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチです。

ジョブズが大学を退学することを決めた後に、受ける必要がないにも関わらず、興味本位で受けたカリグラフ(文字を美しく見せる手法)の授業が、後のMacの設計に役立ち、美しいフォントを持つ世界初のコンピューターが誕生した、とのストーリーです。

もちろん、カリグラフの授業を受けた時点では、それが将来何かの役に立つとは考えてもいなかったわけですが、後に振り返ると、受ける必要がなかったカリグラフの授業を受けたこと(点)、そして、そのきっかけとなった退学の決断(点)が、Macの設計(点)という将来に世界を変える大きな仕事につながった、というエピソードです。

将来をあらかじめ見据えて点と点をつなぎ合わせることは出来ず、出来るのは後からつなぎ合わせることだけなので、現在行なっていること(点)が別の何か(点)につながることを信じて、目の前の出来事に全力で取り組むことが大切、というジョブズからのメッセージです。

日々の仕事のなかで、「何でこれを行なっているのだろう」「何でこの場にいるのだろう」と思う場面は多々ありますが、今はわからないけれど将来現れる「何か」に結びつくのだろうと信じて、一日一日の仕事に精一杯取り組むことが大切なのだと思います。

特に起業をしてからは、毎日が新たな出会いと出来事の連続なので、毎日のようにこのジョブズのスピーチが頭に浮かぶ今日この頃です。

振り返ると私自身もこれまでに様々な経験をしてきて、一つも無駄な経験はなかったと思いますが、特に下記の二つは現在の自分の仕事に大きく影響を与えていると思います。

  1. 20代後半に働いた福岡の不動産会社で、組織、人財に対する考え方や人脈の築き方、問題解決のスキルが大きく磨かれたこと。
    • 組織について、創業50年以上と福岡でも歴史ある不動産会社でしたが、規模と歴史の長さから組織に負の力学が働きそうなところを、チャレンジが推奨される組織文化を築き、さらに組織が陥りがちな社内政治とは対極にある、部門間の協力(情報共有)が活発な組織に導いていた、社長のリーダーシップや哲学から大いに学ばせて頂きました。
    • 人財について、会長が採用面接のときに口にされた『当社は人を材(料)ではなく、企業の強さを生み出す財(たから)として大切にしているので、人「財」と表現している』という言葉は、面接から10年が経った今でも鮮明に耳に残っており、企業の経営資源(特にヒト)を競争力の源とするRBV(リソース・ベースド・ビュー)を基軸とする私の今の考え方に大きく影響を与えています。
    • 人脈構築(ソーシャルキャピタル)の大切さや築き方について、私が仕事人として今でも憧れ、理想とし、尊敬している専務の、人とのつながりが生みだすダイナミックな仕事を間近で見ることが出来、また一緒に仕事をする機会に恵まれたことで、少しずつですが私も人脈が構築出来てきているのかなと思います(もちろんまだまだその方の足元にも及びませんが)。
    • 問題解決力については、今はご勇退された当時の常務から不動産の開発企画のケーススタディーで厳しくも愛情あるご指導を頂きながら徹底的に鍛えられ、仮説の立て方や情報収集の進め方といった問題解決の基本的スキルを身につけることが出来ました(土地を見て20分でビルの規模・投資額・キャッシュフローを導き出すというケーススタディーで鍛えて頂きました)。
    • 不動産の実務能力という点でも、日本ではあまり着目されないのですが、経営資源をVRIO(経済性・希少性・模倣困難性・組織活用性)から捉えると、実は「世界に2つとない」という特質を持つ不動産は、企業の競争優位を大いに生み出す経営資源であり、その実務に強くなったことは、企業の経営支援を行うにあたり大きく役立っています(特に最後の1年で、取引額が大きくかつ複雑なスキームであった2つのディールに携わらせて頂いたのは、かけがえのない経験です)
  2. 小中高と部活動のキャプテンを経験して、コミュニケーション能力や勝利(結果)に対するこだわりが身についたこと。
    • コミュニケーション能力については、高校までの部活動はメンバーの多様性が非常に高く、目標や意欲、スキルにメンバー間で大きく差があるなかで、メンバーとコーチの結節点となり、目標へ向けてチームをまとめる経験が出来たのは、とてもとても大変でしたし、理想のリーダーには程遠かったと思いますが、良い経験でした。多様なメンバーを一つの目標に向かってまとめるなかで、聴く力や感受性といったコミュニケーションに必要な能力が身についたと思います。
    • 勝利に対するこだわりについては、小(ソフトボール)中高(バスケ)とも周囲から勝利(結果)を期待されるチームでキャプテンを任されたことは、大会の度に非常にプレッシャーがかかりましたが、今となれば良い経験でした。プレッシャーという意味では、全国レベルを目指していた高校時代が一番大きかったですが、エピソードとしては、中学時代の市の新人戦が今でも印象に残っています。新チームになってから連戦連勝で圧倒的な優勝候補として臨んだ新人戦の準決勝で、まさかの敗北を喫したあの悔しさは今でも思い出すことがありますし、やるからには勝つ(結果を残す)という想いの起源はあの悔しさにあるとも思います(その後、中体連で同じ相手に準決勝でリベンジして無事に優勝した時の嬉しさも今でも覚えています)。

人生も仕事も、「これまで何をしてきたか」ではなく「これから何が出来るのか」が大切であると思いますが、これまでの「点」とこれからの「点」をつないで、世の中に貢献出来る仕事(点)をしていきたいと思います。

起業をしたばかりで、まだまだ社会的な信用やブランドが及ばない今の私ですが、とても嬉しいことにご紹介がご紹介を呼ぶかたちで、毎日のように新たな出会いを頂いているので、一つ一つの出会いが将来の点につながるということを大切に、毎日の出会いや出来事を楽しみたいと思います。

P.S.忙しさを言い訳にブログの更新を怠っていたら、ブログを見てくださっている方から「最近更新してないね」とドキッとする一言を頂いたので、怠らずに更新してまいります。

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